現在のマレーシアの中絶事情 マレーシアでは現在、刑法第312条から第316条で、中絶は妊娠した日から120日(約4ヶ月間)に制限されています。ただし、妊婦の命や、身体的・精神的に危機が及ぶと判断された場合のみです。その他、レイプや胎児の障害、経済的、社会的等の理由からの中絶は違法となっております。冒頭でも少し触れたように、Ipsosの調査からマレーシアでは人工中絶を支持する意見が非常に少ないということがわかっています。2020年のマレーシアの世論調査では、女性が望むときに、あるいはレイプのような特定の状況下では、中絶を認めるべきだと答えた人はわずか24%でした。マレーシアでは、人工妊娠中絶について「母親の命が危険にさらされている場合を除き、許されるべきではない」という回答が最多でした (マレーシア: 48%、 世界平均: 12%、注1より)。更に、2023年に行われたIpsosによる人工妊娠中絶に対する世界の見解の調査によると、29カ国全体では、過半数(56%)が人口妊娠中絶は合法であるべきだと考えているという結果が出ましたが、こういった中絶への支持は主に欧米の国でされており、アジア太平洋地域での中絶に対する意見は大きく異なるという結果が見られました。その中でもインドネシアやマレーシアでは2人に1人以上が中絶は違法であるべきという考え方を持っていることがわかっています。マレーシアでは、中絶に対する宗教的、文化的、社会的偏見や医療専門家の中絶法に対する認識の低さ、民間医療部門の中絶サービスの高額な費用などが理由で、人工中絶に対する支持が低くなっているようです。 こんにちは!現在、マレーシアのクアラルンプールにある大学で国際政治学や世界で起こっている社会問題について学んでいる、溝口奈歩です。早速ですが、今回の私のレポートのテーマは、マレーシアでの人口中絶に対する考え方です。このニューズレターでは、過去にアメリカやイギリス、オーストラリアなど様々な国の中絶事情がレポートされています。現在、世界25カ国の見解Ipsosによる2020年の中絶に対する世界の見解調査結果をみると、10人に7人が中絶を支持していることが分かります(注1)。この結果を見ると、中絶に賛成している国が大半のように感じますが、東南アジア、特にイスラム教の国(マレーシアやインドネシア)では異なる見解を見ることができました。これらの結果から今回は主にマレーシアの中絶に関する見解についてレポートしていきたいと思います。溝口 奈歩アパシフィック大学テクノロジーアンドイノベーション7マレーシアでの人工中絶に対する見解
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