日本の場合 2024年3月4日、フランス議会は、憲法に女性が人工妊娠中絶を選ぶ自由を含める改正案を可決しました。世界で初めて、憲法に中絶権が明記されたのです。さらに、同年2024年4月11日には、EU議会は欧州連合基本権 オーストリアについての紹介の前に、日本の中絶をめぐる状況について見てみましょう。日本では母体保護法のもと、中絶手術は妊娠21週6日までしか受けられず、それ以降は出産の選択肢しかありません。妊娠12週未満に受ける初期妊娠中絶施術は、大きく2つに分かれます。1つ目は、子宮の内容物や胎児を器具を使って掻き出す掻爬法、2つ目は、筒を子宮に挿入して吸い取る吸引法といういずれも外科的な施術です。これらは、日帰り手術が可能です。 また2023年4月には、経口中絶薬が新たに承認されました。掻爬法や吸引法と比べて、この方法は中絶に伴う身体的かつ精神的負担の軽減が期待されています。WHOも経口中絶薬を最も安全な中絶方法として認めています。妊娠9週0日までが対象で、ミフェプリストンとミソプロストールという2種類の薬を服用します。しかし、経口中絶薬の処方については2つの条件があります。1つ目は、母体保護法指定医であることと(全国で オーストリアでの中絶は、妊娠3ヶ月以内(妊娠13週目の終わりまで)に限り可能とされています。中絶費用はオーストリアの健康保険の適応外となるため、個人負担となります。 婦人科医によって処方された経口中絶薬による中絶は、9週目の終わりまで可能です。日本と同様、ミフェプリストンとミソプロストールを服用します。費用は医療機関によって異なりますが、大体330€から840€が相場となっています(日本円で最高14万円弱!)。また複数の機関では、難民など困難な状況下の人々に低価格での中絶が適応されています。ウィーンでは、難民を含む低憲章として中絶の権利を認めました。これらの大きな変化によって、EU諸国では中絶に関する議論が更に拡大かつ深化していくことが予想されます。それでは、私の住んでいるオーストリアはどうでしょうか。7500人)、2つ目は、リスクに対応し得る医療機関・診療所でのみ処方が可能ということです。しかし全国で経口中絶薬を処方しているのは15施設のみです(2023年6月30日当時)。人工妊娠中絶は、自由診療のため、その費用は各医療機関・地域によって様々です。薬の価格は5万円に加え、診察料と入院費がかかります。経口中絶薬の承認は画期的なことでしたが、現状の医療機関の数は限られており費用も個人負担のことから、国内での普及は時間がかかることが見込まれます。 妊娠12週から22週までの、陣痛誘発による中期妊娠中絶手術は、入院が必要とされ、手術後には死産届と死産証書の提出義務があります。また12週以降の中絶の場合、出産一時金の申請が認められます(1児につき42万円の支給)。 このように、日本ではほとんどの場合、中絶が個人負担となっています。収入の人々は、3ヶ月以上同地に住民登録している場合、公費負担によって中絶を行うことができます。 そのほかの妊娠3ヶ月以内の中絶法は、吸引法です。費用は、各医療機関によって異なりますが、550€から939€と高額です。ただし、経口中絶薬と同様、低価格・公費負担のケースがあります。 上記で紹介した中絶は、いずれも法的に認められている3ヶ月以内の場合です。それでは、3ヶ月以降はどうなるのでしょうか。オーストリアで妊娠3ヶ月後に許可される中絶は、以下の通りです。まず、倫理委員会の許可のうえで、①胎児に深刻な身体的または精神的な障害5 オーストラリアの場合 人工妊娠中絶におけるウィーン大学日本とオーストリアの比較新垣 春佳
元のページ ../index.html#6