THE NEWZ Vol.19 日本語
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日本での導入可能性的な例として、「肥満税」があります。この税は、肥満の原因になると考えるジャンクフードやソーダなどの飲食品に対して課されます。しかしながら、これらの課税政策は消費者の反発を受けやすいです。一方で、この表示制度は消費者の選択の自由を尊重しながら、健康的な意思決定を促進する素晴らしいツールとして機能しそうです。となると、栄養スコアの表示が実際、どのように私たちの意思決定に影響を及ぼすのか気になってきます。では、その影響について調査された研究を見てみましょう。 Robertson(2023)による調査では、アイルランドで4つの模擬市場を使った実験が行われました。模擬市場は次のように設定されています。まず、「Current市場」が基準として設定されました。次に、「Healther市場」では、Current市場に比べて相対的により多くの健康商品が含まれるようにしています。「Healther+市場」では、Healther市場よりも相対的にさらに多くの健康代替商品が含まれています。最後に、「Additional Product市場」では、Current市場に加えてより健康的な商品が追加されています。この実験によって、健康的な商品の選択が増えると、栄養価スコアを知る消費者は、提供される選択肢の範囲に関わらず、平均してより健康的な購入を行う傾向があることが示されました。図1を見てみると、Current市場では「E」の商品を選ぶ消費者が最も多いですが、選択肢 日本の豊かな食文化の中で、栄養スコア栄養表示制度はどのような役割を果たすのでしょうか?ポジティブな側面を考えると、日本は表示制度を取り入れることで、国民はより健康的な選択をしやすくなり、生活習慣病の予防や医療費の削減に貢献することが期待されます。また、企業には健康志向の商品開発を促し、市場の透明性を向上させる効果が期待されます。しかし、日本での栄養スコア制度の導入は一筋縄ではいかないかもしれません。なぜなら、日本の伝統的な食品は塩分を多く含むからです。例えば、味噌や醤油、漬物などが、システムにより不当に低評価されてしまうリスクがあります。日本は多様な食品を組み合わがHealthier、Healthier+と増えるにつれて、選ばれる商品の栄養スコアが改善していることがわかります。ただし、これは数ある調査のうちの一つであり、消費者に及ぼす影響はまだ明確ではない点も多くあります。また、栄養スコア表示制度は比較的新しいものであり、今後の研究や制度の改善により、さらにその有効性が高まることが期待されています。したがって、表示制度の効果については今後の調査を見守ることが大事と言えます。せる食習慣を持っているので、表示制度の導入で本来の目的である栄養改善を実現することが困難になる可能性があります。栄養価スコアはあくまでもバランスの取れた食事の選択を手助けする一つのツールとして機能するべきです。単一の指標に頼ることなく、全体的な栄養摂取への配慮を怠ってはいけません。この制度が日本においてどのように適応し、機能するかは今後の研究や政策策定次第でしょう。しかし、確かなのは、この制度が消費者の意識を高め、より健康な社会の構築に貢献する可能性を秘めているということです。図2:健康商品の増加が消費者の選択に与える影響引用:Robertson, Andersson, & Lunn, 20236

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