THE NEWZ Vol.24 日本語
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14 日本の薬価制度:公定価格と定期改定の仕組み 日独比較と今後の展望:安定性と柔軟性臨床試験で参加者の5%以上がドイツ国内で登録されている場合、一部の価格制約を緩和するという仕組みです。この新ルールは、製薬会社にドイツ国内での研究開発を促進させるインセンティブを与え、医療イノベーションを国内でさらに強化させることを目的としています。AMNOGは、新薬の迅速な普及と医療費抑制の両立を実現してきましたが、今後は精密医療や国際的な医療技術評価(HTA)との連携を深めることで、現代の医療ニーズにさらに適応していくことが求められています。.大きな違いです。日本の薬価制度では、医薬品市場における実勢価格との乖離を是正するため、定期的に薬価が改定されます。従来は2年に1度のサイクルで行われていましたが、社会保障費の増大を背景に、毎年改定の方向へシフトしつつあります。薬価と市場実勢価格の差分を縮めることで、医療費全体の抑制を測る狙いがある一方、製薬企業によっては収益予測が立てにくく、新薬開発の意欲を損なう可能性があると指摘されています。重視した制度となっています。ただし、初期価格が高騰するリスクや評価プロセスの複雑さが課題です。両国の制度を比較すると、日本は安定性、ドイツは柔軟性に強みを持っています。今後は、日本はHTA(費用対効果評価)のさらなる活用、ドイツは評価基準の柔軟化を進めることで、医療の質と持続可能性の両立が期待されます。さらに、両国の取り組みにはそれぞれ独自の強みがあり、互いにとって有益な参考となる可能性が高いと言えるでしょう。また、2024年に可決された医学研究法は、AMNOGにいくつかの重要な変更を加えました。そのひとつが償還価格を非公開にできる「秘密保持オプション」の導入です。ドイツで設定された価格が他国での基準価格として利用されることで市場競争力が低下するのを防ぐことを目的としています。ただし、このオプションを利用するには、製薬会社がドイツ国内で研究開発を実施すること、9%の追加割引を受け入れることが求められ、企業側の負担が大きいことが課題となっています。もうひとつの重要な改定は、新薬の日本では、国民皆保険制度のもと、厚生労働省が「薬価基準」という形で医薬品の公定価格を設定しています。新薬が医療保険に収載される際は、厚生労働省の審査組織と中央社会保健医療協議会が価格を審議し、最終的に「薬価」として公示されるのが基本的な流れです。新薬の薬価は、主に類似薬比較方式と原価計算方式の組み合わせで決定されます。類似薬比較方式では、安全性などを総合的に評価します。また、先行きのグローバル価格とのバランスをとるために、外国平均価格調整も取り入れられます。このように、日本の薬価は行政主導で細かく算定される点が、ドイツの保険者が直接価格交渉する制度との日本とドイツの薬価制度は、それぞれ異なる仕組みを持ちながら、医療費の抑制と新薬普及の両立を目指しています。日本では、国が薬価を一律に設定し、定期的に市場実勢価格との乖離を是正する仕組みを採用しています。この方式は価格の安定性や地域間の公平性を確保する一方で、新薬開発の収益予測が難しく、製薬会社の負担が課題とされています。また、高額薬剤の普及が進む中、柔軟な価格調整が求められています。一方、ドイツでは、新薬の市場投入後6か月間、製薬会社が自由に価格を設定する仕組みを採用しています。その後、科学的根拠に基づいた追加的利益の評価をもとに、製薬会社と保険者が価格交渉を行うため、柔軟性と費用対効果を

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