THE NEWZ Vol.24 日本語
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4 私たちの医療を救う? 医療DXとは まとめさて、日本とフランスの抱える課題を見てきましたが、保険料・税金と医療費の均衡が取れていないという問題と、医療従事者不足の問題など、共通点が多かったと思います。どちらにも有効な解決策となり得るのが、医療DXです。DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術を駆使して、業務の効率化、サービスの向上させるプロセスのことを言います。日本では、400病床以上の病院での、電子カルテ普及率はかなり高く、2020年に90%以上に達しました。しかし、200床未満の病院や診療所では、50%に満たない状態です。人材不足が深刻な地方では、小規模な病院・診療所が多いことを考えると、改善の余地があることがわかります。電子カルテの導入には、かなりのコストがかかること、使いこなすスキルが必要です。持続可能な医療のために、国からの導入補助金支援やIT教育の提供が求められていますフランスでは、開業医の6割から7割が、病院では9割以上が電子カルテを利用しているそうです。また、2022年に採用された「共有医療記録」Dossier Médical Partagéによって、患者自身が診察内容や健康データにアクセスしやすくなりました。また、実際にフランスに住んでいて驚いたのは、オンラインで診察を予約できたり、症状を事前に記録できる点です。予約の管理によって待ち時間も減り、診察内容も後から確認できるため、より安心してスムーズに治療を受けることができます。また、テストが重複するリスクや必要以上の接触を避けることにも繋がるため、医療従事者・患者にとって良いシステムと言えます。課題としては、医療をより使う傾向がある高齢者が、デジタルに慣れておらず、プラットフォームを使いこなせない点が挙げられます。使い方の講義の実施など、対応が求められています。今回は、医療が今抱えている問題と、その解決策になり得る「医療のDX化」についてまとめてみました。導入には費用・人々の適応・カスタマーサービスの充実などなどたくさんの労力と時間を使います。しかし、少子高齢化で医療従事者がわかりやすい例として、電子カルテが挙げられます。従来、全ての病院で、紙のカルテや処方箋を使用していました。しかし、人材が足りていない状況で、PDFから印刷すること、膨大な紙を管理することに貴重な時間を使ってしまうのは、とても勿体無いことです。フランスでも日本でも、電子カルテの導入には積極的に取り組んでいますが、課題もあります。また、日本では、2030年に向けた「医療DX令和ビジョン」が掲げられています。2030年までに、•電子カルテを100%普及させること•全国医療情報プラットフォームをつくること•診療報酬改定DXを導入することが提唱されています。全国医療情報プラットフォームでは、各々で保存している患者情報を、電子カルテの標準化によって、スムーズに共有することを目的としています。紹介状を書く手間や、依然やったはずの診察が重複するリスクをなくすことで、効率的に質の高い医療を届けるのです。診察報酬改定DXでは、報酬改定による現場の負担や混乱を軽減させるためのデジタル技術です。また、マイナンバーカードを利用することで、患者データを伝えやすくなったり、記録が残るため領収証が不要になるなど、患者側にもメリットがあります。不足している今、医療DXの技術を最大限に利用することは、「誰もが質の良い医療を受けられる」ようにするためには不可欠なことなのかもしれません。

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