まず、日本の「医療ツーリズム」の現状を見てみましょう。 世界の医療ツーリズムが急速に成長する中、日本はかなり遅れをとっていると言えます。JIHのデータで見てみると、医療を目的とした来日者は、2019年の時点で年間4,069人。これはなんと、バンコクの1日の外国人受け入れ人数に値します。また、日本の医療滞在ビザの取得者数に至っては、コロナ時期に落ち込みを見せましたが、2022に持ち直しました。しかし、2023年の時点で年間2,295件と、予想を大きく下回っています。一方で、訪問外国人の消費額は年々増加しており、過去10年間で5倍を記録しています。インバウンド需要が大きくなる中、急成長を遂げている医療ツーリズムに参入しようと、日本政府も取り組みを始めています。16 2011年に導入された「医療ビザ」は、最長6ヶ月の滞在が可能で、3年以内なら何度でも入国できるビザです。登録旅行会社や医療コーディネーターが身元保証を行い、安心して受診できる病院の選定も進められています。さらに、2023年に閣議決定された「観光立国推進基本計画」では、日本の質の高い医療と地域の観光を組み合わせて提供することが重視されており、強化地域に採用された場合、伴走支援を受けることができます。他にも、国際的な医療施設評価であるJCI(Joint Commission International)の認証促進やJMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)の創設など、さまざまな取り組みが行われています。ネオマビジネススクール(ランス、フランス)ピダーソン 緑 はじめに 医療ツーリズム政策 みなさん、こんにちは。突然ですが、「医療ツーリズム」をご存知ですか?医療ツーリズムとは、患者が医療サービスを受ける目的で他国へ渡航することを指します(永石, 2015)。先日、授業で医療ツーリズムについて学び、特に東南アジアの国々で「医療が主要な産業になりつつある」ことを知りました。実際に、医療ツーリズムの市場規模は、2022年に14兆円を記録し、2028年までに48兆円と3倍以上成長することが見込まれています (mediphon, 2024)。急成長を遂げている医療ツーリズム業界。医業赤字が見受けられる日本にとって、打開策になるのではと思い、今回のトピックに選びました。では、日本とフランスの医療ツーリズムについて深掘りしていきましょう。Medical Tourism
元のページ ../index.html#17