3 ② 医療施設改善のための政府の取り組みセンメルワイス大学(ブダペスト、ハンガリー)高野内 翔太 ① 政府の財政支援と予算配分 ③ 私立病院に対する政府支援 私はハンガリーで大学に通う中で、個人的な理由や大学の研修で何度か病院を訪れました。その中で特に印象的だったのは、医療スタッフの高い技術力と病院設備の老朽化が非常に対照的だったことです。この経験をきっかけに、日本とハンガリーがどのように病院の施設を最新のものに保っているのかに対して興味を持ちました。 病院の施設を維持・改善するためには、政府からの財政的支援が非常に重要です。日本ではGDPの約11%が医療に充てられています。日本政府は病院の設備や建物を定期的に点検、改善するように努力しており、その結果として患者の満足度が高く効率的な医療提供が実現しています。 一方ハンガリーでは、GDPの約7%が医療に使われています。予算がやや少ないため、病院の建物は古く、設備の老朽化も進んでいます。多くのハンガリー国民が長い待ち時間や病院施設の劣悪な状況に不満を抱いており、政府に医療支出を増やすよう圧力をかけている現状があります。 また、この予算の差は地方の医療提供にも影響を及ぼしています。日本では継続的な投資と公平な予算配分により、地方でも比較的充実した設備を持つ医療機関を利用できます。しかしハンガリーでは、地方の病院ほど設備の老朽化が深刻化しており、多くの小さな町では基本的な医療機器が不足してしまっています。 日本では、私立病院に対しても新しい設備や施設改善のための資金援助など、政府からの大きな支援があります。そのため、私立病院と公立病院の両方で質の高い医療サービスが提供されています。 これに対してハンガリーの私立病院は、政府からの支援をほとんど受けていません。これらの病院は独立して運営されており、主に富裕層や外国人患者向けの医療サービスを提供しています。その結果、公立病院と私立病院の間には大きな医療格差が生まれており、一般市民からは公平な医療の提供を求める不満の声が上がっています。 この記事では、日本とハンガリーがそれぞれどのように、特に両政府の戦略と今後の課題に焦点を当てて、医療施設を管理、運営しているかを見ていきます。この比較を通して、重要な問題を明確にし、どうしたら両国が施設の老朽化を改善できるのかを深掘りしていきたいと思います。 日本は病院施設の改善に積極的で、豊富な資金を投入し、病院のデジタル化や最新医療機器の導入など、さまざまなプロジェクトを推進しています。例えば、「日本再興戦略」では定期的に医療インフラを更新することを目標としており、これにより患者への治療結果が向上し、待ち時間も短縮されています。 一方、ハンガリー政府もこれらの問題を認識しており、EUから一部資金援助を受けた人的資源開発プログラム(HRDOP)などを実施しています。しかし、実際の進行は遅く、多くの市民からはこうした取り組みが不十分だという批判の声が上がっています。日本では私立病院も国の医療計画に組み込まれることが多く、公立病院が少ない地域では特に補助金を受けることが可能です。一方ハンガリーの私立病院は、患者が自己負担する費用や民間の医療保険に大きく依存しています。そのため、最新設備を売りにしてより高額な治療費を請求することにより、多額の利益を出しています。このような状況のため、公立病院よりも設備が整っていることが多いものの、多くのハンガリー市民にとっては利用が難しい状況が続いています。朽ちゆく設備と進化する医療
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