いかがでしたか。今回は、スウェーデンの医療運営方式について、軸となる「公平性」が及ぼす影響をご紹介しま まとめ12 さて、本題に入りますが、医療制度の運営として役割を担っている機関は、社会保険省(国)、ランスティング(医療を所管事務とする地方自治体)、コミューン(日本の市町村に相当する基礎自治体)の3つが存在しています。中でも主体となっているのは、主に18のランスティング、2のレギオン(日本の県に相当する広域自治体)、そしてゴッドランドの計21の地方自治体です。国ではなく地方が担当する地方分権制をとることで、事務の範囲は限られてくるものの、中央統治を避け、国民に限りなく寄り添い、現地のニーズに応えやすくする利点があるとされてい また、医療保険サービスの提供は3つの段階に分けられており、①初期医療、②ランスティングによる医療、③地域グループでの医療があります。家庭医が担当する初期医療から段階を踏んでいくごとに専門性が増し、診療所の数も限られてきます。こういった制度設計は、緊急度や必要性に応じた適切な対処への誘導などと、効率や質のバランスを取ることに重要な役目を果たしています。スウェーデンの医療制度は公平なアクセス、持続可能な医療提供、地域着型サービスなどと、国民からの満足度、信頼度も比較的高い要素によって運営されていることがわかります。した。誰もが平等にアクセスできる、けれど誰もがすぐにはアクセスできない。そういった理念と現実のギャップを埋めるためにはどうすべきか、日本含め様々な医療制度を学び比較することで、答えが見えてくるのかもしれません。ます。 また、サービスは日本のような保険制度というよりは税金が大きな範囲を占めており、財源の70%は地方税によって賄われています。また、医療費の給付はほとんどの場合所得制限を設けておらず、職域関係なく、スウェーデンの全国民に適応されます。こうすることで医療サービスは誰によってもアクセス可能な公営のサービスとして存在しています。 しかしながら、広範囲、高水準で評価されているこの医療制度にも弱点が存在しています。一つは医療アクセスの遅さ、つまり待ち時間の長さです。国民の間では「病院でみてもらうときには治っているか、死んでいる」、「医者に会うよりも総理大臣に会うほうが容易だ」などの皮肉が飛び交っているほどです。予約が何ヶ月先までも埋まっている場合もあり、再調整も困難であるため、いつまで経っても診断まで辿り着かないといった事例が発生しているのだとか。実際に、友人が転倒し骨折した際に、初診の予約を取るまでに約2週間、骨折と診断されるまでに約1ヶ月かかったと聞き、少し不安になったとともに、今回のトピックである運営方式について学び直そうと思ったきっかけとなっています。こういった弱点の要因の一つには先ほど紹介した3段階運営における初期医療がゲートキーパーとして働いていることが挙げられ、現制度設計の改善課題となっています。
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