4.両国の比較と課題に関する考察15 【課題】 中国の公的医療保険の課題についても主に3点あります。①高齢化の進行にともなう医療費の増大⇒高齢になるほど発症率が高いがんや心血管疾病が増え、疾病構造が欧米型に変化してきていることに伴い、国民1人当たりの医療費は大幅に増大しています。②医療の地域間格差⇒高度な医療機関は都市に集中しており、農村部の住民が都市をまたいで受診する場合は、より多くの自己負担額がかかってしまいます。 日本と中国の公的医療保険制度の仕組みや課題を比較してみると、国民皆保険の追求や高齢化を原因とする医療費の増大という課題など、おおむねの傾向は類似しています。しかし、中国は医療へのフリーアクセスができない点や医療費の自己負担額が高額になりやすい点で、実質的には「国民皆保険」であるとはいえず、日本よりも大きな課題を抱えているといえるでしょう。③高度な医療にかかる自己負担額の大きさ⇒公的医療保険で給付される医療費には限度額が設けられているため、がんといった大病の治療には高額な自己負担が必要になってしまいます。 どちらの国も高齢化に伴う課題の解決策を検討していく必要がありますが、中国に関してはフリーアクセスの実現などによって少しでも不平等を解消していくことがより急務であるといえます。
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