THE NEWZ Vol.27 日本語
4/21

 初めまして。今号より、The NewZの執筆に携わらせ3ブカレスト大学(ルーマニア)羽角 恭一ルーマニアの基本情報と現状 今回は、ルーマニアと日本の社会保障制度の違い及びルーマニアの医療の地域格差についてレポートしていこうと思います。 医療に関しても同様で、都市部では高度な医療設備を備えた総合病院や専門医が集中しているのに対し、農村部では基礎的な医療サービスすら受けられない地域が少なくありません。先進的な治療を求めて都市部まで何時間もかけて通院する必要がある患者も多く、経済的・地理的な理由から治療を断念せざるを得ないケースも見受けられます。(2023年時点でのルーマニアの農村部に住んでいる人の割合)ていただく羽角です。現在ルーマニアのブカレスト大学にて政治学を勉強しています。このレポートを通して日本ではあまり知られていないルーマニアの現状について自分なりに伝えていけたらなと考えています。よろしくお願いします。 まず初めに、ルーマニアは日本と比べて全体的に生活水準が低い国であると言えます。ルーマニアにおける一人当たりの月間生活費は約10万円程度とされており、日本の平均的な生活費と比較するとかなり低く、物価水準の違いが反映されています。2023年時点の購買力平価(PPP)を考慮した一人当たりGDPはルーマニアで約3万ドル、日本で約4万ドルと、数字上はそこまで大きな差がないように見えることもありますが、実際の国内経済の成熟度や社会インフラの整備状況には依然として大きなギャップが存在します。ルーマニアの一人当たりGDPは近年徐々に向上しており、特にEU加盟以降は経済発展が進んでいますが、それでもなおEU全体(EU27カ国)の平均と比較すると、約80%程度にとどまっており、依然として「中進国」レベルの経済発展段階にあります。国全体の名目GDPに関しても、EU加盟27カ国中16位に位置しており、経済的には下位グループに属しているのが現状です。 さらに深刻な問題として挙げられるのが、国内における地域格差の大きさです。特に首都ブカレストとそれ以外の地方都市や農村部の間には、経済的な格差が顕著に見られます。ブカレストはルーマニアの政治・経済・文化の中心地であり、多くの国内外企業が本社を構えており、平均給与も他の地域に比べて大幅に高いです。一方、地方部では雇用機会が限られており、農業や季節労働など不安定な収入に頼る人々が多く、失業率も高い傾向にあります。実際、僕自身がブカレストからブラショフという街に電車で移動した際窓の外に映る景色が一面畑や荒れ果てた農地などで都市との生活のギャップに衝撃を感じました。 このような経済格差は、教育水準や医療サービスの質の違いにも直結しています。ブカレストや主要都市では大学や専門学校の数が多く、高等教育を受けられる環境が整っていますが、地方部では学校の数が限られており、教師の確保や教育資源の不足といった問題が慢性的に続いています。その結果、高等教育進学率や学力テストの結果にも大きな地域差が生じています。ルーマニアと日本の社会保険制度の違いと問題点について

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る