THE NEWZ Vol.27 日本語
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••ルーマニアの医療制度と問題点 問題解決に向けての活動4 さらにルーマニアにおける大きな課題の一つとして、前述した医療の地域格差が挙げられます。現在、ルーマニア全体には540程度の病院が存在していますが、そのうち約480が都市部に集中しており、農村部にはわずか50前後の病院しか存在していません。これは、ルーマニア国土の約87%が農村部であり、全人口の45%が農村部に居住しているという事実を踏まえると、いかに農村部の医療インフラが脆弱であるかがわかります。交通インフラも整備されていない地域が多いため、緊急時に適切な医療機関にアクセスできないケースも少なくありません。農村部の自営業者や高齢者といった層は健康診断の義務も機会も与えられておらず、医療検査を何年も受けていない人が多いのが実情です。 このような状況により、農村部では本来予防可能であったはずの疾患たとえば糖尿病や高血圧といった生活習慣病によって命を落とす人の割合が都市部に比べて高くなっています。また、疾患が進行してから初めて病院を訪れるケースが多く、発見時にはすでに手遅れとなっていることも珍しくありません。予防医療の不足、地域医療の偏在、社会保障の未整備という三重の課題が、ルーマニアの農村部における医療問題をより深刻にしているのです。 医療は社会保障制度全体の縮図であるとも言えると思うので、財政問題や国外への人材流出、地方インフラの遅れなど様々な課題がありますが、EUとの国際協力やNGOと政府の連携による、これからの医療状況の改善に期待したいです。ルーマニアの医療制度は、日本と同様に社会保険制度を基盤としています。つまり、基本的には公的な保険に加入することで、誰もが一定の医療サービスを受けられる仕組みになっています。しかし、その制度の運用のされ方や資金の流れ、医療サービスの提供体制には大きな違いが存在します。 日本では、医療、年金、介護、雇用、労災といった社会保障制度が非常に細かく分類されており、それぞれに対して国民が保険料を支払うとともに、国が税金による補助を行うことで制度の持続可能性が支えられています。特に国民健康保険制度は、被用者保険とともに全国民をカバーしており、年齢や職業にかかわらず基本的な医療を受けられることが保証されています。これにより、都市部・地方部を問わず比較的均等に医療サービスを受けることが可能になっており、一定の健康管理が社会全体でなされています。 一方でルーマニアでは、社会保険制度の枠組みは存在しているものの、その主な財源は労働者が支払う保険料に依存しており、国からの財政支援は限定的です。つまり、実質的には正式な雇用に就いている人が社会保険に加入し、医療費を支えるという構図になっており、非正規雇用者や自営業者、農村部の住民、高齢者などが制度の外に取り残されやすいという問題が存在します。そのため、医療サービスのカバー範囲も狭く、特に予防医療や慢性疾患の管理といった分野では十分な対応が難しい状況です。 このような現状を打開するために、ルーマニア政府では、近年以下の活動が活発に行われています。•若手医師に農村部での医療活動を奨励する奨学金及びインセンティブ制度の導入•家庭医制度の強化•農村部を移動して診察する医療キャラバンの導入NGO 団体による医療支援EU から資金を元にした新しい病院の建設

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