THE NEWZ Vol.27 日本語
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メンタルヘルスとのつながりカナダ社会に見る独立的自己理解と外見の多様性6→実際には存在しない外見上の欠点や、ささい以下は、自己肯定感の低下によって起こる可能性のある症状の一例です:•うつ病•不安障害 (社会不安障害を含む)•摂食障害(過食や拒食など)•身体醜形障害(Body Dysmorphic Disorder)な外見上の欠点にとらわれることで多大な苦痛が生じたり、日常生活に支障をきたしたりします。 上記に挙げた症状に限らず、自己肯定感の低さやボディイメージの歪みは、日常生活のさまざまな行動にも深刻な影響を及ぼします。これらの影響は、個人の学びや教育機会、将来の選択肢を狭めるだけでなく、学校や職場での積極性や自己表現を妨げ、対人関係の形成や意思決定にも悪影響を与えることがあります。その結果として、社会全体としても、創造性や多様な人材の活躍が抑制されること、及び精神的不調による生産性の低下や経済的損失にまでつながるのです。 実際、街中を歩いていても、目に入るファッションやメイクは本当に多様で、体型や肌の色に関係なく自分が着たい服を着て、メイクをしたいときにする、 そんな自分らしさを大切にし、それを個性として肯定する風土があるように思います。世界中から多様な人種・文化が集まるカナダ、体型・肌の色・ファッションスタイルなどに1つの正解はなく、それぞれが異なる美しさを持っているという考え方が根づいているのです。では、このような外見に対する自己認知の傾向は、メンタルヘルスにどのような影響を与えるのでしょうか。他人からの評価を優先する相互依存的自己理解の考え方は、しばしば高い承認欲求を生み、それが他人との比較を強める要因となります。その結果、自分の見た目に対して過度に厳しくなり、自己肯定感の低下につながるのです。また、心理学の研究によると、自己肯定感の低さは様々な精神的健康を損なうリスク要因であることが明らかになっています(Merino et al., 2024)。 先ほども少し触れたように、カナダは「独立的自己理解」を重視する「Modernist(個人主義的文化)」に分類されます。先ほどの「10代女性に自分の容姿に自信があるか」を問う調査をもう一度見てみると、「自信がない」と答えたカナダの値は52%、つまり残りの48%の少女が自分の見た目に自信があると回答しており、日本のわずか7%と比べても非常に高い数値を示しています。 この差は、カナダ社会に根づく「人は人、自分は自分」という考え方によるものだと考えられます。他人と自分を切り離し、「自分がどう感じるか」「自分の価値をどう見出すか」が尊重される文化、そして多様性を大切にする社会的背景がこの結果に少なからず影響を与えているのでしょう。

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