8テキサス州立大タイラー校(アメリカ)渡辺 雄大アスレティックトレーナー制度の国際比較:医療専門職としての米国と補助的立場の日本 一方、日本の大学では部活動は人格形成や教育の一環としての側面が強く、競技の成績に加え、上下関係や礼儀、継続的な努力が重視される文化があります。入部は比較的自由で、幅広い学生が参加することができ、活動の目的や体制も多様です。その中でスポーツメディカルの関わり方も、学校や競技レベルによってさまざまな形を取っています。置に関しては明確な線引きがあり、職域の制限を感じることもあります。 このように、アメリカではATが医療職として法的に定義され、より広い裁量と責任を持って活動しているのに対し、日本では制度や職域が限定的で、ATが治療の最前線に立つことは少ないのが現状です。 私はアメリカの大学にテニスのスポーツ推薦で進学し、スポーツの給付型奨学金を得てプレーしていました。アメリカの大学では競技での成績が学費に直結するため、常に試合で結果を残さなくてはならないという強いプレッシャーがあります。また、アメリカでは大学スポーツがキャリア形成やビジネスとして捉えられており、競技成績が大学の運営や注目度にも関わることから、選手のコンディション管理やケガへの対応としてスポーツメディカルが体系的に取り入れられています。アスレティックトレーナー(AT)は、選手の身体的ケア、障害予防、応急処置、さらにはリハビリ支援まで担う専門職であり、医療とスポーツの橋渡し役とも言える存在です。アメリカのAT資格は、全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)の基準に基づき、認定大学や大学院での高度な専門教育を修了し、BOC(Board of Certification)試験に合格することで取得できます。資格取得後は、継続教育(CEU)を通じて知識と技術の更新が義務付けられており、医療現場での高い実践力が求められます。現場では徒手療法や評価はもちろん、ドライニードリング(針治療)や物理療法機器の使用、緊急時の対応なども行い、理学療法士や医師と並ぶ立場で連携するケースもあります。ATは法的に医療職と定められている州も多く、医療保険の適用対象となることもあります。 一方、日本におけるアスレティックトレーナー資格は、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)などが発行する民間資格であり、国家資格ではありません。教育課程では運動器障害に関する知識や応急処置、テーピング、リハビリ支援などを学びますが、実際の怪我の治療や医療行為は医師や理学療法士の役割とされ、ATは補助的な立場にとどまることが多いのが現状です。そのため、選手のコンディション管理には関与するものの、医療的な処アメリカと日本における大学スポーツの医療支援体制の比較
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