「対 GDP 保健医療支出」とは、国内総生産(GDP)に対して、どれだけの割合を医療や健康に関連する分野に使っているかを示す指標です。これは、国が経済の中で医療にどれほどの資源を配分しているかを表すもので、医療への力の入れ具合を数字で見ることができます。この指標は、医療と経済の関係を考えるうえでとても重要です。たとえば、医療に使うお金が多すぎると、国の財政に大きな負担をかけることになります。しかし逆に、あまりに少なすぎると、必要な医療サービスが行き届かず、国民の健康状態が悪化する可能性があります。そのため、医療費と経済のバランスを取ることは非常に大切です。また、対 GDP 保健医療支出は、医療政策や予算配分を考えるときの判断材料にもなります。どれだけの予算を医療にあてるべきか、保険制度をどう設計するかといった課題に対して、この指標が役立ちます。さらに、この指標は国際的な比較にも利用されます。たとえば、他の国と比べて自分の国の医療支出が適切かどうか、足りているのか、あるいは使いすぎているのかを判断するのに役立ちます。2019 年のデータでは、日本の対 GDP 保健医療支出は11.0%(推計値)で、OECD 加盟 38 か国の中で 5 位でした。これに対し、アメリカは 16.8%で 1 位となっており、日本よりもはるかに多くの資源を医療分野に投入していることがわかります。こうした数字からも、国によって医療への考え方や支出のあり方に違いがあることが見て取れます。ます。もっと緊急な症状(たとえば呼吸困難、非常に高い熱、心臓発作や脳卒中など)のときは、「救急治療室(Emergency Room)」に行きます。ここでは予約なしで診てもらえますが、緊急性の高い人から優先して診察されるので、待ち時間が何時間にもなることもあります。アメリカの病院でも、最初に受付で ** 保険証(保険カード)** を見せ、必要な書類に記入します。保険の内容によっては、「コーペイ(Copayment / Copay)」という自己負担金を、診察のたびに払うこともあります。アメリカでは、診察で何か異常があれば、すぐに ** 専門の医師(専門医)** を紹介されたり、高額な精密検査を受けるように言われることがあります。これは、専門医制度がしっかりしていて、もし診断ミスがあると訴えられるリスクが高いためです。そのため、医療費がさらに高くなることもあります。私が実際にアメリカで耳鼻科にかかろうとしたときは、最初の診察までに約 3 週間待ち、さらに検査を受けるまでには 1 か月ほどかかりました。このように、アメリカでは診察までにかなり時間がかかることがあるのです。【日本の入院費のしくみ】1. 基本の入院費(保険適用)ふつうの 4 人部屋以下なら、追加料金なしで入院できます。全国一律の金額です。2. 差額ベッド代(保険適用外)個室や 2 人部屋など、特別な部屋に入りたい場合にかかる追加料金です。希望した場合のみ請求されます。たとえば、3 割負担で計算すると:• 急性期病院(重い病気の治療をする病院)では、1 日約17,000 円 → 自己負担は約 5,100 円• 地域包括ケア病棟(回復期などのケアを行う病棟)では、1 日約 14,400 円 → 自己負担は約 4,320 円日本では、病院やクリニックにかかるとき、予約をしなくても受診できることが多いです。まず受付で健康保険証を出し、問診票(症状などを書く用紙)に記入します。その後、医師による診察を受け、必要に応じて検査を受けます。診察や検査の結果によって治療の方針が決まり、薬が必要な場合は処方せんが出されます。その処方せんを薬局に持って行くと、すぐに薬を受け取ることができます。会計もその日のうちに済ませて終わりです。このように、日本では手続きがスムーズで、体調が悪くなったときにすぐ病院に行ける仕組みが整っています。これに対し、アメリカでは、病院にかかるには基本的に予約が必要です。すぐに受診できる医療機関は限られていて、予約なしで診てもらえるのは、「ウォークイン・クリニック(Walk-in Clinic)」や「アージェントケア(UrgentCare)」など、軽い病気やけがに対応する場所です。アージェントケアでは、軽い骨折やインフルエンザ、吐き気や下痢など、そこまで緊急ではないけれど早めに治療したい症状に対応しています。予約なしでも利用でき7. 日本の医療費8. 医療受診手順の違い9
元のページ ../index.html#10