THE NEWZ Vol.28 日本語
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ただし、それ以外の人は、以下のような限られた公的な医療保険しか利用できませんでした。• メディケア:65 歳以上の高齢者や障がいのある人が対象• メディケイド:低所得者(収入が少ない人)が対象• 児童医療保険プログラム(CHIP):低所得の家庭に育つ子どもが対象このように、アメリカでは保険に入れる人と入れない人の差が大きく、医療を受けたくても受けられない人がたくさんいたのです。オバマケアは、そうした状況を改善するために始められました。65 歳未満の人の医療保険加入率は、83%から 94%まで引き上げられることを目指していました。新たに設けられたルールや保険会社への厳しい規制により、一定の成果があがり、無保険者はかなり減りました。しかし、オバマケアにも課題は残っています。というのも、オバマケアは民間保険を中心とした医療制度そのものは変えなかったため、すべての人が保険に入れるようになったわけではありません。実際に、2019 年時点でも約 2,200万人から 2,300 万人が、まだ保険に入れていませんでした。そのため、今でもアメリカは先進的な民主主義の国の中で唯一、「国民皆保険制度」がない国であり、これからも多くの無保険者を抱え続けると見られています。オバマケアは前進ではありましたが、すべての問題を解決したわけではなかったのです。• メディケイドの加入対象者が拡大した。• 連邦政府が定めた貧困レベル 400%以下の世帯に対し• 従業員50人以上の企業は従業員にたいして医療保険• 医療保険取引所(Health Insurance Exchange )を2010 年 3 月、アメリカでは当時のオバマ大統領のもとで、「医療保険改革法(Affordable Care Act)通称オバマケア」が成立しました。オバマケアが作られた背景には、日本とはちがって、アメリカには国民全員が保険に入る「国民皆保険制度」がなかったことがあります。そのため、保険に入っていない人(無保険者)が多く、医療を受けられない人もたくさんいました。たとえば、2011 年の時点では、アメリカの人口のうち約 15.7%、人数にすると約 4861 万人が無保険でした。オバマケアが始まる前、アメリカの人たちは次のような方法で医療保険に入っていました。まず、およそ 6 割の人が、会社や職場から提供される民間の医療保険に加入していました。アメリカ市民および合法的移住民は個人による医療保険の加入が義務ずけられた。て、保険料の税額控除を導入。を提供しておらず、少なくとも1人の従業員が保険料税額免除を受けている場合、罰金を払う必要がある。通じて個人および企業が手ごろな値段と、自らの自由な選択で保険購入を可能とする。こうしたオバマケアの改革によって、10 年間で無保険の人を 3,200 万人減らすことが目標とされました。アメリカと日本の医療制度・保険制度を比較してきましたがいかがだったでしょうか。以上のように、アメリカと日本の医療制度は大きく異なります。日本はすぐに医療治療を受けることができ、費用も比較的高額にはならないため、体調不良の場合には病院を受診することが多いと思います。しかし、アメリカでは医療を受けるのには多くの手順を踏まなければならず、時間もかかり、費用も高額になるため、緊急性がない限り医療機関を受診しない傾向があります。実際にアメリカで生活する中で、その違いを強く感じています。そのため、アメリカではセルフメディケーションがより発達しています。健康のために医療機関の存在は欠かせないものであり、全ての人が簡単に信頼できる医療機関にアクセスできることが非常に重要であると感じました。9. アメリカの医療を変えたオバマケア10. オバマケアによって変化したもの11. まとめ10

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