THE NEWZ Vol.28 日本語
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バーミンガム大学(イギリス)植野 藍1. はじめに2. 現在の医療制度の課題日本日本は急速に高齢化社会へと移行している国であり、医イギリスイギリスでも高齢化社会の課題を抱えていますが、それCOVID-19 パンデミック以降、医療制度利用における全体の待機者数は大幅に増加しており、現在もその数は増加傾向にあります。この問題はさまざまな要因が影響していますが、主な原因はパンデミックによる一時的な医療制度の中断と医療従事者の慢性的な不足と考えられています。また、高額な医療費用は、実際に受けることのできる医療サービスに対して不釣り合いにも感じます。例えば、NHS( 国民保険制度 ) への利用が制限されているにもかかわらず、学生ビザ保持者は年間 £1,035 の医療保険を支払う必要があり、処方薬、歯科治療、視力検査など一部の治療に関しては NHS の対象外となっています。一方、日本では留学生に国民健康保険の加入を義務付けているものの、前年の所得に基づいた一定額 ( 通常は月額約 2000 円ほど ) で医療費の 70% の保険が適用されます。また、入院時には限度額適用認定証を事前に申請することで、自己負担額を抑えることも可能です。このように、学生ビザ保持者の視点から医療制度の費用と質を比較すると、両国の医療制度には明確な差がみられます。近年、特に COVID-19 パンデミックの影響を受け、すべての人々の健康と福祉を促進・提供・保護するために、医療制度の持続性がますます重視されています。医療制度の持続可能性は、発展途上国に限らず日本やイギリスのような国々にも問題視されており、両国は現在、人口構成の変化や医療の効率化といった課題に直面しています。本レポートでは、それぞれの医療制度の課題を比較し、それらに対する対応策について、私自身のイギリスと日本での経験を交えて分析します。療制度にも大きな影響を与えています。このような状況は「超高齢化社会」とも呼ばれ、2023 年には 75 歳以上の人口が全人口の 16.1% である、2,008 万人に達しました。これは 65 歳から 74 歳の人口を上回る水準であり、政府の予測では、今後も高齢化は深刻化し、2070 年には 2.6 人に 1 人が 65 歳以上、4 人に 1 人が 75 歳以上になるとされています。政府の医療負担額が 2000 年は約 30 兆円だったのに対し、2022 年には 46 兆円を超えるまでに増加したことから、このような急速な高齢化は医療制度の財政的な課題をもたらすことが危惧されています。しかしながら、政府の医療支出は増加傾向をみせているものの、日本では最低限の費用で高品質な医療を受けることができ、平均寿命や患者満足度の高さからもその質の高さがうかがえます。以上に医療制度の利用において長時間の待ち時間が深刻な問題となっています。11イギリスと日本の医療制度の持続可能性

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