これに対して、日本の医療費にも地域差があります。日本の 2020 年度の人口 1 人当たりの国民医療費は 35 万8800 円でした。これは、全国の医療費の合計を日本の総人口で割って出した金額です。しかし、この医療費も都道府県によって違いがあります。最も高かったのは高知県で、1 人あたり 47 万 1100 円。一方、最も低かったのは埼玉県で、31 万 8100 円でした。この差は約 1.48 倍になり、アメリカと同じように、日本でも地域ごとに医療費に差があることがわかります。つまり、医療にかかるお金は、どこに住んでいるかによって変わるということです。日本とアメリカでは医療制度の仕組みは異なりますが、「地域差がある」という点では共通しています。以下の図 2 は、都道府県ごとに 1 人あたりの医療費がどのように違っているかを示したものです。この図を見ると、全国でどの地域が高く、どの地域が低いのかが一目でわかります。図2 都道府県別にみた国民医療費・人口一人当たり国民医療費日本には「国民皆保険制度」があり、すべての人が公的な医療保険に入っています。このおかげで、病院にかかったときの自己負担は原則 3 割です(子どもや高齢者はもっと少ないこともあります)。また、高額療養費制度があるため、医療費が高くなりすぎた場合でも、一定の金額を超えた分は国が助けてくれます。たとえば:• 初診料(最初の診察代)は保険が効くので、全国どこでも約860 円です。• 入院費も保険が効きます。ただし、部屋のタイプによって違いがあります。ここで注目される指標のひとつに、「国民一人当たりの医療費(Health Spending Per Capita)」があります。これは、病院での治療、医師による診療、介護施設、薬代など、個人が医療に使ったお金の合計を、その州の人口で割って算出したものです。民間の保険や公的な制度を通じて支払われたすべての医療サービスや製品が含まれています。なお、病院の支出には「純収入(Net Revenue)」が使われており、これは病院が実際に受け取った金額(契約による割引、不良債権、無料治療などを差し引いたもの)を表します。ただし、医療施設の建設費、研究費、保険制度の運営費などはこの計算には含まれていません。たとえば 2020 年には、ニューヨーク州の国民一人当たりの医療費は 14,007 ドルと、非常に高額でした。一方で、もっとも低かったユタ州は 7,522 ドルで、ニューヨークの約1.86 倍もの差がありました。このようなデータからもわかるように、アメリカでは住んでいる州によって、医療費のかかり方が大きく異なります。以下の図 1 では州による国民一人当たりの医療費の違いを示しています。図 1アメリカでは、日本に比べて医療費がとても高いです。たとえば、ニューヨークのマンハッタンでは、• 普通の診察(初診)で 150 ~ 300 ドル(約 2 ~ 4 万円)• 専門医の診察だと 200 ~ 500 ドル(約 3 ~ 7 万円)• 入 院 す る と、** 部 屋 代 だ け で 1 日 2,000 ~ 3,000ドル(約 30 ~ 45 万円)** もかかることがあります。これは、中間所得者(ふつうの給料の人)の 1 か月分の給料と同じくらいか、それ以上になることもあります。さらに、アメリカでは医療費の請求が医師、病院、検査機関などからバラバラに届くのが一般的で、診察や入院からかなり時間がたってから請求書が届くことも珍しくありません。5. アメリカの医療費6. 日本の医療費8
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