でも安定して確保できるタバコが、人々のストレス解消として利用されていたため喫煙率も上昇していきました。共産圏が崩壊した後、東欧諸国は健康リスクを鑑みて禁煙や健康増進法の普及に着手しましたが、法整備に時間がかかってしまったため現在でも喫煙する人が日本に比べて多い状況になっています。費用面で日本と比較しても生活水準が低いルーマニアではタバコ本体とそれに伴う税金どちらも日本より安価になっています。ショッピングモールに行くと、タバコ専門店が点在しており人々がいつでも・どこでもタバコを手に入れられる環境が整っています。ルーマニアの成人年齢は日本と同様、18 歳であり未成年の喫煙は禁じられているものの14~16 歳のうちから喫煙を始める青少年が多いという調査もあることから、簡単にタバコが文化として定着している環境がゆえに、未成年でも喫煙が抵抗なく行えてしまうのが実状です。日本とは反対に、若年層が喫煙を好み、若いうちからの肺がんのリスクが増加しています。( カフェのテラス席に設置してある灰皿と吸い殻 )今までタバコのネガティブな側面ばかり取り扱ってきましたが、ルーマニアでは喫煙率の高さが故に日本では死語になりつつあるタバコミュニケーションがいまだに存在しており、会話がはずむきっかけにも一役買っています。写真のようにカフェのテラス席には基本的に全席灰皿が設置されており、文化的に定着していることがこのような側面から分析できます。近年ルーマニアでも政府が喫煙率低下を目指して取り締まりや法整備を強化しているものの、前述した若年層のタバコの定着や都市部と農村部の禁煙対策に対する格差からまだまだ日本ほどの水準の対策は期待できないのが現状です。 ( 日本の肺がん罹患率 ) タバコは発がん性物質や有害物質を多く含んでおり、肺に直接作用することで肺がんのリスクを大幅に増加させます。喫煙を通じた交流などポジティブな面で作用することもありますが、健 康に対するリスクを考えると不釣り合いなほどリスクの方が大きいと私は感じます。日本は肺がん患者数がとても多い国であり、喫煙をすればするほど発症しやすい症状であるというデータもあります。具体的なデータを見つけることはできませんでしたが、日本の約 2 倍の割合で喫煙者がいるルーマニアで肺がん患者が少ないとは考えられません。日本と同じように健康教育を推進することで若年層の喫煙率は下げることができると思うし、都市部だけではなく農村部に対しても充実した対策を政府が施していくべきだと考えます。今回は主に紙タバコでの喫煙についての比較をしてきましたが、今後は電子タバコなども対象に入れながら分析していきたいと思いました。文化と健康のバランスを上手に調節することが現在のルーマニアの喫煙者に求められている課題なのかもしれません。 4. おわりに12
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