3. ラーゴムが背景にある医療支援方法14このようなラーゴムという考えを医療支援に絡めて観察してみると、スウェーデンには日本とは少し異なった医療環境を発見することができます。一例として高齢者への支援を紹介します。「寝たきり高齢者」という単語が存在しているように、日本の医療現場では延命治療を優先する傾向にあります。しかしながら、こういった高齢者終末期の医療方法には、世界の常識、在り方とはかけ離れているケースが多いのが現実です。その反例として、スウェーデンでの緩和医療を重視する医療を紹介させていただきます。緩和医療とは、身体、そして精神の辛さを和らげるために行われる医療であり、最後まで穏やかに過ごすことを目的としています。一方で、延命治療は 1 分、1 秒でも長く生存時間を伸ばすことを目的としています。それらの多くのケースは、最期まで苦しい思いをすることがあります。緩和治療が生活の質を重視することもあり、スウェーデンでは人を楽しむ支援が充実していると言われています。例えば、生活においてスウェーデン人は夏になるとサマーハウスなどへの旅行へ出向くことなどが根付いています。そういったライフスタイルを送っていることもあり、老人ホームなどではリハビリの一環として安全な旅行ができるよう、本人を訓練したり、国の制度として、移動タクシーを高齢者対象にタクシー代を補助していたりと、生活面での支援が充実しています。高齢者自身だけではなく、社会全体で質の高い生活を高齢者に過ごしていただくために、医療よりも生活自体を支援するということを大切にする傾向にあります。これらも元を辿れば、スウェーデンの「自分らしい生活をする」ことや、求めすぎない、今に満足するというラーゴムの価値観が根底にあるのかもしれません。
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