THE NEWZ Vol.30 日本語
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 救急医療サービス(EMS)は、患者が病院に到着する前に迅速な処置を行うことで命を救う重要な役割を担っています。日本とハンガリーの両国は高度な EMS を整備していますが、その組織運営やチームの訓練方法には大きな違いがあります。本記事で1. 救急救命士(パラメディック)が行える処置2. EMS システムの構造と実際の運用方法判断・処置の自律性日本: 日本の救急救命士(ELST)は「タスクシフト」制度の下で活動しており、医師の指示があって初めて高度な医療処置を行います。この仕組みは重大な判断に必ず医師が関与することを保証しますが、数秒が勝負となる緊急時には瞬時に対応できないことがあります。ハンガリー:ハンガリーの救急救命士は大学や現場で培った知識と技術を活かし、自ら状況を判断して適切な対応を決定します。救急車に医師が同乗している場合や電話で連絡が取れる場合でも、細かい指示を待つ必要はありません。この高い自立性により、心停止や重度の出血など命に関わる状況で、処置を遅らせることなくすぐに行動に移せるのです。 はじめに5センメルワイス大学、ハンガリー高野内 翔太1. 救急救命士ができることは以下の二つの主要な点を取り上げます。 この 2 点を見ていくことでそれぞれのアプローチの利点と懸念点を明らかにし、日本とハンガリーのシステムを比較していきます。高度な医療処置日本:「救急救命士(ELST)」と呼ばれる日本の救急救命士は、点滴のための静脈路確保、除細動器(心臓に電気ショックを与える装置)の使用、気管挿管などの高度な処置を行うことができます。しかし、このような処置を実施する際には、無線を通じて必ず事前に医師の許可を得なければなりません。このルールは安全性を高めることはできますが、指示を待つ間に処置が遅れる可能性があります。ハンガリー:救急医師とともに活動します。国の定めた明確なガイドラインに沿って、自らの判断であらゆる救命処置を行う訓練を受けています。そのため、強力な薬剤の投与、気管チューブの使用、骨折の固定などを、医師に連絡することなく直ちに開始することが可能です。十分な訓練と処置を施す権限を持つことで、緊急時における対応の迅速化が図られています。ハンガリーでは、救急救命士は 4 年間の大学課程を修了し、命を救う 2 つのシステム

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