THE NEWZ Vol.30 日本語
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2. EMS システムの組織構造 結論組織体制日本: 日本の EMS(救急医療サービス)は、各地域の消防署によって運営されています。119 番通報を受けるのは市町村単位の消防本部で、通報を受けると、各消防署から救急車が出動します。消防庁(総務省の外局として全国の消防・防災を統括する機関)が基本的なルールや方針を定めていますが、実際の人員配置、訓練、装備の管理などは、それぞれの自治体が担当しています。このような「ワンティア(一層)」型のシステムにより、全国でほぼ同じ仕様の救急車が配備され、統一された手順に基づく対応が可能となっています。ハンガリー:全国組織が EMS を一括して運営しています。政府直轄の NASは、国内を7つの地域に分け、各地域に複数の支局を設置。訓練、装備、車両、制服まですべてを中央で統一管理することで、国内のどこでも同じ水準の救急医療が提供される体制を整えています。出動要請とコールトリアージ日本: 誰かが 119 番をダイヤルすると、通報は地域の消防指令センターに届きます。オペレーターは決められた質問リストに従い、状況の深刻度や必要な救助の種類を判断します。多くの消防指令センターには医師が常駐しており、無線で救急救命士に指示を出しながら、救急車が到着する前に最適な病院や処置内容を選定するサポートを行います。 両システムはそれぞれ異なる強みを持っています。日本の消防署 - 主体モデルは、全国で均一なカバー範囲を実現し、迅速な救急車の手配が可能となっています。しかし医師の指示が必須となるため、病院に搬送される前での救急救命士の介入範囲が制限されます。一方、ハンガリーの統合型 NAS は、救急救命士の高い自立性と現場への医師同乗を組み合わせることで、迅速な高度救命処置(ALS)を促進しますが、その分だけ多くの人員を要します。 迅速性と人材の効率的な配置を最優先するなら日本のモデルが有利です。しかし、現場での医療の質を最大化し、素早い医療処置を重視するなら、ハンガリーのフランコ ‐ ドイツ型アプローチが優れていると言えます。早期 ALS が生存率向上に極ハンガリー:ハンガリーでは 104 番(または EU 共通の 112 番)にダイヤルすると、国内 19 か所の地域ディスパッチセンターのいずれかにつながります。これらのセンターは訓練を受けた救急救命士や医師が対応し、通報内容の深刻度に応じて優先順位をつけます。最寄りの救急車チームを迅速に派遣し、必要に応じて無線で追加の医療指示を行います。首都ブダペストの中央ハブが全国のリソースを調整し、大規模災害や多数傷病者発生時にも各地域が的確にバックアップし合える体制を整えています。医療機関との連携体制日本:  ほとんどの救急車に医師は同乗していないため、日本の救急救命士はオンライン医療コントロールに依存しています。指令センターの医師やオペレーターが無線で適切な処置手順や、患者の状態に最も適した病院の選定をアドバイスします。この仕組みはシステム化されており、円滑に機能しますが、都度の指示待ちにより多少の時間がかかることがあります。ハンガリー:ハンガリーの救急隊は、特に重症ケースでは医師が同乗することが一般的です。現場に医師がいることで、その場で心臓病、脳卒中や外傷などの的確な診断を下し、どの専門科を受診すべきかを即座に判断できます。また、必要に応じてヘリコプター搬送や移動式集中治療ユニット(MICU)の手配も可能で、複数の医療機関を経由する転院による遅れを大幅に軽減できます。めて重要であることを考えると、コストは高くとも、ハンガリーのシステムは重篤な緊急事態においてより多くの命を救う可能性を秘めています。ただ、その国それぞれの人口分布やその都市の大きさによって適したモデルは変わってくるので一概にどちらがいいとはいえないということです。6ハンガリーでは「国立救急サービス(NAS)」という、一つの

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