THE NEWZ Vol.31 日本語
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 まず、イギリス政府および National Health Service (NHS) が薬物依存をどのように捉えているかを説明します。NHS は、薬物依存は精神的かつ医学的な疾患であるとの見解を示しています。薬物依存について、NHS は次のように述べています ―「依バーミンガム大学(イギリス)植野 藍な視点や文化的な態度、そして依存症治療に対する医療的アプローチに大きな影響を与えています。 イギリスでは薬物依存に対してよりオープンかつ医療と結合されたアプローチが取られており、これは治療への参加だけでなく個人が支援を受ける意欲にもつながっています。対照的に、日本では薬物使用に対する偏見や法的な罰則から、報告される薬物検挙数は低くなっています。その結果、薬物依存に苦しむ人々にとって公的支援を受けることや社会復帰を果たすことが極めて困難になっています。 この2つの国の違いから、本レポートではイギリスと日本における薬物依存への医療的アプローチを比較し、それらの違いの背景にある要因について考察してみたいと思います。 イギリスのバーミンガムでの学びを通じて触れた、大きな文化の違いは危険薬物についてです。危険薬物の使用は依然としてイギリスにおいて広範な問題であり、薬物関連の死亡者数の増加や、国内外における薬物取引といった組織的犯罪にもつながっています。私が住んでいるバーミンガムはイギリスの中でも特に深刻な薬物文化を抱える都市の一つでもあります。この事実は、私が薬物問題や薬物依存への医療的アプローチについて、より身近な問題として考えるきっかけになりました。 私は日本に滞在中に薬物依存に陥っている方を直接目にしたことはありませんが、近年では日本においても危険薬物の問題が拡大しています。例えば、俳優やインフルエンサーなどの著名人が薬物乱用で逮捕されるケースなどです。しかしながら、依然として日本は危険薬物の使用率が諸外国に比べ低く、統計的にみると、イギリスの薬物の使用率は日本よりもはるかに高いことがわかっています。この違いは、法律的存症は、欲求を満たして快感を得るために、ますます多くを必要とするようになることで制御不能になります。」 さらに、薬物に含まれる物質は、身体的にも精神的にも人体に非常に強い影響を与え、快感をもたらすと同時に、再び使用したいと言う強い衝動を生み出すとも説明しています。 これらの情報は NHS の公式サイトに掲載されており、依存とは何かを解説するページの下部には「依存症は治療可能なものである」と強調しつつ、支援を受けられる窓口が案内されています。このことからイギリス政府および NHS は薬物依存を精神疾患であり、かつ医学的な病状であると捉えていることがわかります。 はじめに イギリスにおける薬物依存の見解11イギリスと日本における薬物依存への医療的アプローチとその比較について

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