THE NEWZ Vol.31 日本語
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5 トロント大学(カナダ)黒川 夢1. 中学生のオーバードーズから見える現代日本の薬物事情ると、“ 身体によくないのは明らかなのになぜ薬物に走ってしまうのだろうか? ” とつい疑問に思ってしまいまっていました。しかし、今回、薬物問題についてリサーチを進める中で、薬に頼らざるを得ない状況を作り出している社会的背景にも目を向ける必要があることに気づきました。また、日本では未成年者による市販薬オーバードーズが問題になっている一方で、カナダでは大麻合法化以降の社会的影響が問題視されています。このように、国によって社会の受け止め方や規制のあり方が大きく異なることにも関心を持ちました。そこで本稿では、日本とカナダにおける薬物問題の現状と特徴を整理し、両国の異なる政策や文化的態度の違いについて考察していきます。図 1:マリファナ出典:Poison Control「Marijuana: Risks and Effects」より引用 最近、55 人に 1 人の割合で中学生が市販薬を乱用していることが調査で明らかになり、社会問題として記事に取り上げられていました(共同通信 , 2024)。彼らが使用していたのは、風邪薬や鎮痛薬といった私達も一度は手にしたことがあるような身近なものでした。一見、薬物乱用というと大麻等の ( 日本では ) 違法薬物を想像する人も多いかもしれません。しかし、実際にはこのような薬局ですぐ買えてしまうような身近な薬から乱用が始まるケースも少なくはなく、これらの薬も不適切に使用すればオーバードーズ(過量摂取)につながることが研究でわかってきています。 私が日本に住んでいる時は、薬物に対して危機感はあったものの自分にはあまり関係のないもののように感じていました。しかし、大麻が合法であるカナダに来てから、日常的に街中で大麻を吸う人々を見かけるようになり、薬物問題について考えさせることが多くなりました。私だけの視点から見薬に頼る若者たち —日本とカナダにおける薬物問題の比較

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