THE NEWZ Vol.32 日本語
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12 まとめの職場における満足度の向上やモチベーションの維持において重要であると考えられます。そして、メンターシップ制度や若手看護師の職場適応への支援などを導入することで、看護師が働きながら継続的に学び、成長できる体制の構築につながるといえます。最後に、人間関係と職場サポートの強化も欠かせません。カナダ王立協会(Royal Society of Canada)の分析によれば、サポートのある職場環境は看護師の自発的離職を防ぐ最も効果的な要因の一つとされています。具体的な施策としては、専用のメンタルヘルス休暇やピアサポートプログラムを取り入れることが挙げられています。これらの施策は看護師の満足度を向上させ、職場への定着率を効果的に高められると考えられます。堅看護師に向けたキャリア支援など、看護師それぞれが職場に適応しやすい環境づくりが重視されています。これに対し、カナダでは、海外資格者の採用促進やワークライフバランス支援など、組織や制度全体を対象とした改革が提唱されています。 看護師不足の問題は、医療現場のみならず人々の健康と福祉に直結する重大な課題です。短期的な人材補充にとどまらず、看護師一人ひとりが安心して働き続けられる社会的基盤を整えることが、これからどちらの国においても重要になってくると言えます。 まず重要なのが、看護師のワークライフバランスの確保です。多くの看護師がバーンアウトを経験している現状を踏まえると、看護師が心身の健康を維持しながら長期的に働ける環境づくりは、人手不足の解消に不可欠であると言えます。具体的には、残業の強制廃止や休暇の取り消しの撤廃、さらには多様な勤務シフトに対応した施設内延長保育の提供などが挙げられます。次に、海外で資格を取得した看護師の積極的な採用も有効な手段とされています。カナダ国内には、国外で看護師資格を取得したものの、登録手続きの複雑さや高い費用などの制度的な障壁によって、国内でその資格を活かせていない人材が多く存在しています。そのような人々が国内で看護師としてよりスムーズに就業できるよう、資格認定手続きの簡素化や迅速化を進めることは、人手不足解消の大きな一歩となりえます。また、賃金の改善とキャリア支援も有効であるとされています。賃金の引き上げだけで看護師不足が劇的に解決されるわけではないものの、業務に求められる技能や労働環境に見合った賃金を支給することは、看護師 日本とカナダはいずれも、医療需要の高まりとそれに伴った慢性的な看護人材不足という共通の課題に直面しています。両国において提唱されている改善策を比較すると、共通して重視されているのは職場環境の質の向上であるといえます。どちらの国においても、単に賃金を上げるだけでなく、看護師が安心して働き、かつ成長することができる環境を整備することが人材確保の鍵であるとされています。特に、看護師が日ごろから同僚と積極的に交流を行って関係を築いたり、自身のキャリアについて考え、行動を起こしたりすることができるような体制を整えることは、看護師の職場満足度を高め、離職防止につながることが示されています。一方で、両国のアプローチには若干の違いも見られます。日本では、離職防止のために、新人看護師に向けた社会的なサポートや中

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