THE NEWZ Vol.32 日本語
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3カウンセリングと心理療法の違いウィットマン・カレッジ(アメリカ)唐司 京香カウンセリングのこれまで 近代カウンセリングの夜明け (19 世紀末~ 20 世紀初頭 ) 現代カウンセリングの確立カウンセリングとは?厳を取り戻せるよう社会に働きかけました。この運動が、現代のメンタルヘルスの考え方の礎となっています。3. 職 業 指 導 運 動 (Vocational Guidance Movement): 同 じ く1908 年、フランク・パーソンズが職業指導局を開設しました。彼は若者一人ひとりの適性や興味を科学的に分析し、最適な職業選択ができるよう支援しました。これは、キャリアカウンセリングの直接的な起源とされています。ロジャーズが用いた「カウンセリング」という言葉と、その来談者中心療法のアプローチが広く受け入れられたことで、今日のように、様々な悩みを抱える人々を支援する専門的な活動全般が「カウンセリング」と呼ばれるようになりました。そして、その専門家を「カウンセラー」と呼ぶことが定着したのです。カウンセリングと「心理療法(サイコセラピー)」は、しばしば同じ意味で使われますが、厳密には少しニュアンスが異なります。カウンセリングは主に相談者の話に深く耳を傾け(傾聴)、その人自身の感情や状況をありのままに受け止める(受容)ことを通じて、相談者が主体的に問題を解決できるようサポートすることに重点を置きます。一方で、心理療は より医学的な側面に近く、特定の症状(うつ、不安など)や問題行動の改善・解決を具体的な目的として行われる専門的な治療法を指します。認知行動療法、精神分析療法、家族療法など、確立された様々な技法が存在します。近年では、相談者の状態に合わせて最適なアプローチを組み合わせる「統合的アプローチ」や、科学的な証拠(エビデンス)に基づいた効果的な支援が重視されるようになっています。1. 心理測定運動 (Psychological Testing): 1905 年、フランスの心理学者アルフレッド・ビネーが世界初の知能検査を開発2. 精神衛生運動 (Mental Hygiene Movement): 1908 年、元精神科の患者であったクリフォード・ビアーズが、自身の劣悪カウンセリングがどのように発展してきたのか、その歴史を「近代」と「現代」に分けて見ていきましょう。カウンセリングの源流は、19 世紀の産業革命にまで遡ります。この時代、人々の価値観が宗教中心から科学中心へと大きく変化しました。それに伴い、人の心や精神の働きも科学的に解明しようとする動きが活発になり、精神疾患に対しても科学的なアプローチが試みられるようになります。この流れの中で、近代カウンセリングの基礎となる 3 つの大きな運動がほぼ同時期に生まれました。しました。これにより、個人の知的能力を客観的に測定し、教育などに活かす道が開かれました。な入院体験を基に「全国精神衛生協会」を設立。精神障害者が非人道的な環境から解放され、適切な治療と人間らしい尊 これらの別々の流れとして始まった運動は、やがて人々の様々な悩みや問題に対応する総合的なアプローチへと発展していきます。 その過程で特に大きな影響を与えたのが、心理学者のカール・ロジャーズです。彼は、専門家が一方的に指導や助言をするのではなく、相談者(クライエント)自身が自分と向き合い、自らの力で問題を解決していく力を引き出すことを重視しました。カウンセリングとは、専門的な知識と技術を持つカウンセラーとの対話を通じて、相談者が自分自身の心と向き合い、悩みを整理し、新たな気づきを得るプロセスを支援することです。その活動は、病院や福祉施設だけでなく、学校(スクールカウンセリング)や会社(従業員支援プログラム)など、幅広い場面で行われています。ストレス管理、感情のコントロール、人間関係の悩みから、うつ病などの精神疾患からの回復まで、心のケアを多角的に担います。「カウンセリング」という言葉の語源は「助言」ですが、現代の心理カウンセリングの本質は、カウンセラーが一方的に答えを与えることではありません。カウンセラーは、相談者が自分自身の力で回復への道筋を見つけたり、複雑な感情や思考を整理したりするのを、専門的な立場から支える役割を果たします。日本とアメリカのカウンセリング

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