THE NEWZ Vol.32 日本語
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4カウンセリングの 2 つの目的 日本におけるカウンセリングの現状と課題 データで見る日本のメンタルヘルス なぜ日本人はカウンセリングを利用しないのか?2. 成長モデル(教育モデル)これは、病気の治療というよりも、個人の成長や自己実現、より良い生き方を見つけることを目的とします。例えば、「理由はないけれど、なんとなく生きづらい」「いつも人間関係で同じ失敗を繰り返してしまう」、「自分の人生やキャリアについて見つめ直したい」といった悩みに対して、カウンセラーは相談者の話を深く理解しようと努めます。その対話を通じて、相談者は自分自身の考え方の癖や行動パターンに気づき、「これからどうすれば、より自分らしく生きていけるか」という答えを自ら見つけていくのです。高く、警察庁の暫定値では 2023 年の自殺者数は 21,818 人にのぼりました。気分障害の患者数うつ病などを含む気分障害の患者数は年々増加しており、厚生労働省の調査では約 112万人に達しています。特に女性は男性の約 1.7 倍と、多くを占めています。2. 教育の遅れ日本では長い間、学校教育でメンタルヘルスについて学ぶ機会がほとんどありませんでした。しかし、精神疾患の発症ピークが 10 代半ばであるという科学的知見に基づき、変化が起きています。2022 年度から、約 40 年ぶりに高校の保健体育の授業で「精神疾患の予防と回復」が必修項目となりました。これは、若者が心の問題に早く気づき、助けを求める力を身につけることを目指す大きな一歩です。しかし、専門家からは、人格形成の重要な時期である小中学生からの早期教育や、教員自身の理解を深める研修の必要性も指摘されています。カウンセリングは、必ずしも精神的な病気を抱えた人だけが受けるものではありません。その目的は、大きく 2 つのモデルに分けられます。1. 治療モデル(医療モデル)これは、精神疾患の症状を改善したり、問題となる行動を減らしたりすることを目的とするアプローチです。 うつ病、不安症、PTSD、適応障害、パーソナリティ障害など、診断名がついた疾患の治療を目指す場合がこれにあたります。 日本では、心の健康を保つためのカウンセリングの利用率が欧米諸国に比べて著しく低い状況にあります。このことが、メンタルヘルスの問題が深刻化する一因となっています。カウンセリング利用率について。OECD のデータによると、欧米では国民の 10 〜 15% がカウンセリングを利用しているのに対し、日本ではわずか 6% に留まります。職場のメンタルヘルスにおいて、 厚生労働省の調査では、精神的な不調を理由に休職・退職する人が増加傾向にあります。自殺率はWHO のデータでも、日本の自殺率は先進国の中で依然として 日本のカウンセリング普及を妨げている要因は、主に文化的背景と教育の問題にあります。1. 文化的な障壁 「我慢は美徳」という価値観。 精神的な辛さを表に出さず、自力で耐え忍ぶことが良いことだとされる文化が根強くあります。そのため、専門家に助けを求めることに心理的な抵抗を感じる人が少なくありません。強い「同調圧力」も原因の一つです。 日本社会は、個人の意見よりも集団の和を重んじる傾向があります。「自分らしくあること」が「みんなと違うこと」と見なされると、自分の感情や悩みを抑圧してしまいがちです。この文化は社会の結束力を高める一方で、個人のメンタルヘルスに大きな負荷をかけることがあります。

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