THE NEWZ Vol.32 日本語
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7ドイツにおけるセルフメディケーションの定着と特徴 日独比較と今後の展望れており、国際的にも自由度の高い制度運用で知られています。2000 年から 2016 年の間に、ドイツでは 30 を超える有効成分(容量や剤形、適応が異なるものを含む)が転用されており、その約半数は新しい治療領域を切り開いた「革新的転用」とされています。ただし、医療保険制度上、軽症向けの市販薬に保険は適用されません。これにより、患者が「自分で治せる症状」と「医師にかかるべき症状」を自然に区別する習慣が形成されています。 さらに、ドイツ連邦医薬品医療機器庁(BfArM)は、スイッチ OTC 化の基準として「安全性・自己判断可能性・誤用リスクの低さ」を重視しており、専門家と市民が参加する委員会で透明性の高い審議が行われています。このように、セルフメディケーションが制度と文化の両面から支えられている点が、ドイツの特徴といえます。 一方で、ドイツではセルフメディケーションが国民の生活に深く定着しています。ドイツの医療制度は、日本のように受診時の自己負担が低い仕組みではなく、医師の診察には一定の費用や待ち時間がかかることから、軽度な症状はまず薬局(Apotheke)で相談する文化が根付いています。薬局には薬剤師が常駐しており、風邪や頭痛、胃腸障害などの日常的な症状について、薬の選択や服用方法をその場で助言することが一般的です。 ドイツでは、一般用医薬品の販売は薬局に限定されており、スーパーマーケットなどでの販売は原則認められていません。その代わり、薬剤師が消費者と直接対話し、健康状態を確認した上で適切な薬を勧める仕組みが確立されています。医薬品の専門的管理が徹底されている点は、日本のセルフメディケーションとは異なる特徴です。 日本とドイツを比較すると、両国とも医療費抑制と医療資源の効率化を目指してスイッチ OTC を推進していますが、その定着の背景は異なります。日本では制度改革を中心に上から整備が進められている一方、ドイツでは薬局文化と国民の自己判断意識が根付いています。今後の日本に求められるのは、制度整備に加え、薬剤師との連携や健康教育を通じて、セルフメディケーションを日常的な習慣として根付かせることです。ドイツでは、スイッチ OTC に関する制度が早くから整備さ

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